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2017年5月12日 (金)

「お客様は神様です」というのは歌手のキャッチコピー(153)2017/ 5/12

YouTubeでも「お客様は神様」で引くと、クレーマーの客が「お客様は神様ちゃうんかい?」とわめくシーンが良くあります。

しかしこれは孟子や孔子が遺した諺でも訓戒でもなく、三波春夫というイチ歌手が、キャッチコピーとして使っていたセリフで、まるで日本の常識みたいに使われることを懸念し、故三波春夫氏のオフィシャルサイトでもわざわざ発端や解説を出しています。

http://www.minamiharuo.jp/profile/index2.html

三波さんが偉大な歌手だったとしても、一芸能人が発したコピーで、「皆さんもお客様は神様だと思いましょう」とも言っていないのです。

Photo
いわば丸大ハムのわんぱくでもいい、たくましく育ってほしい

前田敦子の「私の事は嫌いでもAKB48は嫌いにならないで下さい」

と同じレベルなんです。

クレーマーにこう言われた時の返し方として

「日本の法律には信仰の自由があります」とか、

「何神様ですか?死神や貧乏神様とはお近づきになりたくないんですが」

とかもありますが、私は

「それはただの歌手のキャッチコピー(謳い文句)です」

というのが正しいと思います。

それでもこのセリフにこだわる場合は、

「当社(当店)の方針や社是社訓にはそのような言葉が見当たりません。三波春夫さんは亡くなってますので、所属事務所に問い合わせて頂けますか?」

と言って追い返しましょう。

02

 

三波春夫著『歌藝の天地』
(1984年初刊  2001年文庫化  いずれもPHP研究所)より

「お客様は神様です」の発端

 お客様は神様です」という言葉が流行ったのには、びっくりした。よく、この言葉の真意はどこにあるのかと聞かれるが、私も、その答えに困ることがある。テレビなどで、短い時間で喋るには、うまく説明が付かない。

   皆さんのほうでは、面白がって、「お客様は仏様」だの「うちのカミサンは神様です」とか、「選挙民は神様じゃ」などといった言葉になって広まっていった。いやはやどうにも賑やかなこと。
そのあげくに、「こんなふうに言われるのは、どう思います?」とくる。
   しかし、振り返って思うのは、人間尊重の心が薄れたこと、そうした背景があったからこそ、この言葉が流行ったのではないだろうか?

   私が舞台に立つとき、敬虔な心で神に手を合わせたときと同様に、心を昇華しなければ真実の藝は出来ない―――と私は思っている。つまり、私がただ単に歌を唄うだけの歌手だったらならば、きっとこんな言葉は生まれなかったと思うのです。浪花節という語り物の世界を経てきたからではないだろうか。

   つまり、浪花節の台詞の部分は「瞬時のうちに一人で何人もの登場人物を的確に表現」しなくてはならない。そうしなければ、決してドラマは語れないのである。

 われわれはいかに大衆の心を掴む努力をしなければいけないか、そしてお客様をいかに喜ばせなければいけないかを考えていなくてはなりません。お金を払い、楽しみを求めて、ご入場なさるお客様に、その代償を持ち帰っていただかなければならない。

 お客様は、その意味で、絶対者の集まりなのです。天と地との間に、絶対者と呼べるもの、それは「神」であると私は教えられている。

 あれはたしか、昭和三十六年の春ころ、ある地方都市の学校の体育館だった。
司会の宮尾たかし君と対談の際にこんなやりとりがあった。

 「どうですか、三波座長。お客様のこの熱気、嬉しいですね」
 「まったくです。僕はさっきから悔やんでいます」
 「!?」
 「こんないいところへ、何故もっと早く来なかったんたろう、と」

ここで、お客様はどっと笑ってくれる。ここまでは、昨日通りの対談内容。
すると、宮尾君はたたみかけて、
 
 「三波さんは、お客様をどう思いますか?」
 「うーむ、お客様は神様だと思いますね」

ウワーッと客席が歓声の津波!私ははっとしたが、宮尾君もびっくり。客席と私の顔を見比べて、
 
 「カミサマですか」
 「そうです」
 「なるほど、そう言われれば、お米を作る神様もいらっしゃる。ナスやキュウリを作る神様も、織物を作る織姫様も、あそこには子供を抱いてる慈母観音様、なかにゃうるさい山の神・・・・・・」

   客席はいっそうの笑いの渦。その翌日から、毎日このパターンが続いて、どこもかしこも受けまくった。宮尾君は、お父さんが落語家であり、本人も研究熱心だから、司会者としても一流。漫談もうまい。
   こうして、このやりとりを続けて全国を廻るうちに、レッツゴー三匹が舞台を見て、おおいに流行らせたのである。

追記:
“翌日から、毎日このパターンが続いて…”とありますが、三波と宮尾さんが自発的にしたのではなかったのです。山陰地方を廻るツアー中のこの出来事でしたが、”三波春夫が、お客様を神様だと言う面白い場面があるよ”という評判がすぐに広まり、各地の主催者さんから「あの場面、必ずやって下さいね。お客様も待っていらっしゃいますから」と言われ、連日この2人のトークの場面をやらなければならなくなった、というのが真相です。

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